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過去の掲載記事
中外日報 2012年1月21日掲載


      




  ◇◆◇ 平成の障壁画 ◇◆◇

 田村能里子 「風河燦燦 三三自在」
 
 禅宗寺院のふすま絵では過去に例のない初めてのケースだろう。
 女性の洋画家がキャンバスにアクリル絵の具で描き、しかも赤という生命感強い色彩を基調にした大自然と人間賛歌の画面。
 天龍寺の塔頭宝厳院に再建された本堂を豊かに荘厳するのは、田村能里子の「風河燦燦三二自在」の58面の障壁画だ。
 禅寺のふすま絵に見られる水墨画の竜虎や雲竜図、中国の故事、羅漢図などの仏画と大きく異なり、
 しかも女性が手がけたという新機軸に平成ならではの時代感覚があふれる。

  田村は、武蔵野美術大学を卒業後、インドをはじめタイや中国などアジア各地に写生行で滞在、
 大地や大自然とともに生きる人間の姿を描いてきた。
 砂塵にけむるような独特のマチエール(絵肌)とタムラ・レッドに象徴されるような強く豊かな色彩。
 中国・西安の唐幸賓館に描いた「二都花宴図」を第一作に、田村は国内外の建築などに数多くの壁画を描いてきた。
 中国との仏教交流で度々訪中していた田原義宣宝厳院住職が「二都花宴図」の絵に共鳴。
 念願の本堂再建を機縁にふすま絵の揮毫を依頼した。
 壁画がちょうど50作目となる田村は、壁画制作の集大成として取り組んだ。


  本堂の室中と上、下の3室を飾るのは、強烈な赤が印象的な大地に生きる老若男女のさまざまな営みの姿態である。
 朝陽の輝きを帯びた大地で白い薄衣を装った男や女たちが語らい、働き、憩い、安らぐ姿。
 眉月のぼる群青の空を背景に大地に横たわって眠る老人。
 無名の老若男女の生きる姿勢への共鳴と親近感が悠久の時空に息づいている。
 「風河燦燦三二自在」という画題の三三は、観音が33の化身となって衆生を救済するという経典にちなむ。
 ふすま絵の画中に人物が33人描かれているのも、そうした意図だ。
 無名の人々の日々を生きる無垢の魂にさりげない仏性を宿らせた新様式のふすま絵だ。



  〈メモ〉 大本山天龍寺塔頭宝厳院の本堂ふすま絵は、秋10月の約1カ月間、 一般公開され鑑賞することができる。


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