田村能里子オフィシャルホームページ:過去の掲載記事婦人公論
過去の掲載記事
北海道新聞2010年3月掲載

札幌でアジアの人々を手間にした絵画展を開く

 肩の肌をあらわにした熱帯アジアの女性、顔に深いしわを刻むシルクロードの老人−。
これまでに住んだインド、中国、タイの人々を描いた油絵や素描50点を展示する個展
「赫い季節風」
「インド女性の鋭いまなざしに生きる力を感じます。年を重ねたウイグル民族のおじいさんは美しい。
人間、自然体が一番。その姿は『ゆっくりおやりよ』と言っているような気がします」

 愛知県出身。東京・武蔵野美大を卒業後、1966年に商社員だった夫の転勤でインドへ。
異文化を好奇心で受け止めた。
86年、北京中央美術学院に留学。
「遣唐使になったつもり」で西安のホテルに描いた最初の壁画「二都花宴図」は縦1.6メートル、
幅60メートルの超大作。
以来、カンバスだけでなく、豪華客船や寺院、病院などの壁に絵を描いてきた。
「作業現場にいる美の神のほほえみを感じながら描いています」

 95年の阪神大震災直後、大阪で開いた個展に被災者が多く訪れた。
砂漠に生きる民を描いた絵を見た被災者から「厳しい環境でも生きていけるんだと励まされた」と言われ、
「絵は元気を与える」ことを再認識した。
 「北海道にアジアの温かな風を届けたい」と願う。
東京都に夫と2人で暮らす。65歳。今回の個展は4月11日まで。



アジアの民 情感深く
 札幌で田村能里子絵画展


 アジアの風土に生きる人々を描き続ける画家田村能里子さんの道内初の本格的な個展
「赫い季節風」(札幌駅総合開発、北海道新聞社主催)が9日、札幌エスタ・プラニスホール
(中央区北5西2)で始まった。

 田村さんは愛知県生まれ。
インドや中国、タイなどに長く滞在して制作を重ねてきた。
 個展はJRタワー開業7周年記念事業で、油彩や素描、縦2.8メートル、横3.8メートルの壁画など
約50点を展示。
赤みを帯びた肌のシルクロードの民を情感深く描いた作品が、ファンを引き付けていた。
 会場で田村さんが「赤に込められた人の温かさが伝わり、北海道の皆さんを勇気づけられれば」と語った。
観覧料は一般600円、高校・大学生500円、中学生以下無料。 4月11日まで。


読売新聞北海道版
《  吉田豪介 美術の散歩道 》

 線が抜群 田村能里子展

 札幌のプラニスタホールで4月11日まで「田村能里子展 赫い季節風」が開催されている。
壁画や大作などが中心の50点で、副題どおり赫々と照りつけているような酷暑の中国やシルクロードを背景に、
美しい女性や集う老人たちが描かれている。

 4年ぶりに再会した田村さんは、相変わらずエネルギッシュな美人であった。
彼女は旭川の画廊「ギャラリーシーズ」で3回、小品や版画の展覧会を開いているが、オーナーの久木佐知子さんも
彼女の大ファンである。
どちらも無類の仕事好きだから、今回の企画も、二人の友情の絆で動き出したのかもしれないと思った。

 3月15日午後、翌日の公演会のために田村さんは札幌に来ていた。
そこで彼女に主に描画技法について尋ねた。
背景の色調の微妙さについては、下塗りに補色(赤と緑など)を塗って、奥行きを深くし、マチエール(画肌)作りには
数種のローラーを使って絵の具を十分塗り重ね、絵肌に、乾ききった砂漠の風合いを生み出しているのである。

 また彼女の絵を生き生きとさせる鍵は卓抜なデッサン力にいあると思い、「素描の線は若いころから抜群ですね!」
と問いかけると、たしかに「暑いインドの路傍の人たちをモデルに、汗をかきながら勉強しました」とにっこり笑って
答えてくれた。
この一筆ごとに自在に走る線の的確さこそ彼女の絵の魅力であり、生命線なのだと私は納得した。

 よく16日にはJRタワー36階の講演会「田村能里子 絵の道は出会いの旅」へ出掛けた。
用意された250席が満席で、後に大勢の客が立っていた。
彼女は、颯爽と登場して主に壁画制作について語った。
西安やドイツ、それに京都天龍寺の襖絵など世界でもう53点になる。
一緒に制作中の映像も流され、ゴンドラややぐらで黙々と筆を運ぶ姿が映っていた。
怖かっただろうに、彼女の話題で笑いが広がっていく。
そのタフさが彼女らしい。









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